最近話題のhiit(HIIT)トレーニングって何?
最近、ネットやSNS、書店などで目にする「HIITトレーニング」
短時間で「やせる」「脂肪燃焼する」ということで興味ある方が多いのではないでしょうか。
ここでは、「HIITトレーニングについて述べたいと思います。
HIITトレーニングとは
HIITトレーニングの背景
HIITトレーニングとは「High Intensity Interval Training(ハイ インテンシティ インターバル トレーニング」の略で、「高強度インターバルトレーニング」とも表現されます。実際はその運動形態からインターバル(interval:間隔的)よりインターミッテント(intermittent:間欠的)という言葉の方がより適している表現になります。
いずれにしても「インターバルトレーニング」とは運動と不完全休息を交互に繰り返すトレーニング方法をいいます。
学生時代、運動部などに所属した経験のある方は「インターバルトレーニング」や「インターバル走」「サーキットトレーニング」などの経験があるのではないでしょうか。
HIITトレーニングの「高強度」の定義
では、インターバルトレーニングが休息を挟みながらトレーニングするということは理解したとして、「高強度」とは一体どういうことなのでしょうか?
「高強度」についての明確な定義はかなり難しいです。なぜなら、体力には普段の運動経験により個人差があるからです。その人にとって「きつい」「楽だ」といった主観的な指標で判断する場合と心拍数を用いた客観的な指標で判断する場合の二つの方法があります(他には呼吸中の二酸化炭素量を計測したり、血中の乳酸値や酸素飽和度を測定する方法などもあります)。主観的な方法では運動直後に人と会話できないくらいが「高強度」になります。客観的な指標では最大心拍数を使うのが一般的で、最大心拍数の80~90%を目安にします。
最大心拍数の求め方は従来「220-年齢」というものがありますが、学術的根拠がないということで最近では「208-0.7×年齢」が用いられています。
それほど正確性が必要でなければ「220-年齢」でも大丈夫です。どちらも推定値なのであくまでも参考ということで認識してください。
目標の心拍数を決定したら、実際に心拍数を測定します。
最近はスマートウォッチや指輪型の心拍数測定装置が普及していますのでそちらを参考にしてもよいですし、手首や首(頸動脈)で1分間の脈拍を測定します。15秒間の脈拍を測定して4倍するのでもよいでしょう。(6秒間を10倍でもよいですが、短い秒数ほど誤差は広がるので注意してください。ちなみにスポーツ用の心拍計の開発に携わった経験がありますがこちらも正確性という意味では疑問符がつきます。機械だからといって正確とは限りません。)
HIITトレーニングの立役者は日本人
世界的ブームとなっている「HIITトレーニング」ですが、この立役者は日本人だということをご存じでしょうか。
インターバルトレーニングそのものは1950年代から行われておりますが、昨今のブームの火付け役は1990年代にスピードスケート日本代表チームの自転車こぎによるインターバルトレーニングの効果を論文発表した田畑泉先生(現・立命館大学)のトレーニング方法が「TABATAプロトコル」や「タバタ式トレーニング」などと呼ばれ、フィットネス大国であるアメリカでブームとなりました。いわば逆輸入のような形でここ数年日本でもブームとなっているのです。もともとがアスリート向けのトレーニング方法だけにかなり強度が高く、一般の方々には難易度が高いものでした。その後、一般向け(ダイエット用)にトレーニング内容が改良されていきました。全国各地にある女性専用(最近では男性専用も増えてきました)の30分フィットネス施設などはその典型となります。30分フィットネスは30秒間のマシントレーニングと30秒間のその場での足踏みを交互に行うインターバルトレーニングになります。最近提唱されているインターバル速歩も同じといえるでしょう。
HIITトレーニングのメリットとデメリット
HIITトレーニングの効果
HIITトレーニングの効果としては
- 心肺機能(持久力)アップ
- 筋力アップ
- 脂肪燃焼効果の持続
などが挙げられます。
1.持久力アップ
ほとんどのスポーツ競技は短い運動と休息の繰り返しから成り立っています。
例えば、サッカーやバスケットボールといった球技全般、テニスや卓球、バドミントンといった対人ネット競技、柔道や剣道、レスリングなどの格闘技など、それぞれ競技時間は異なっても、インターミッテント(間欠的)な運動の連続であることは変わりません。「スタミナがないから長距離走る」ということではなく、HIITトレーニングで持久力を高めることができます。また、競技特性を考慮すると言っても、例えばサッカーで90分間HIITトレーニングをするわけではありません。
2.筋力アップ
一つの種目が20秒間とはいえ、限界近くまで追い込むことになるので筋力アップの効果が期待されます。
初心者であれば初期では筋量が増大して筋肥大が見られるかもしれません。
ある程度慣れてくると筋肥大というよりも筋力アップの効果が期待できます。
自分の体重が負荷のトレーニングだけで続けていると筋力アップの効果にも限界があります。
筋肉に対する負荷が足りないと感じてきたら、ゴムチューブやダンベルを用いるなど負荷をかけることに工夫が必要になってきます。
3.脂肪燃焼効果の持続
アフターバーン効果といって、激しい運動を行うと運動後は身体を元の状態に回復するために体内の酸素消費量が増加していくという現象(EPOC-Excess Post-exercise Oxygen Consumption)を利用した効果を言います。つまり、運動中だけではなく運動後も酸素消費量が持続していくことになります。このアフターバーン効果は24~72時間持続するといわれており、脂肪燃焼に効果的だといわれています。
HIITトレーニングのメリット
HIITトレーニングのメリットとしては、
上記の効果のほかに
- 短時間
- 省スペース
でできることがメリットといえるでしょう。
短時間
1回あたり4分程度という短時間で完了できるというのが一番のメリットです。
複数セット行う場合でも合計で30分程度ですから、ジョギングやウォーキングよりも短時間でできます。
省スペース
特別な器具を使うわけではありませんので、畳一畳分(約180㎝×90㎝)もあればトレーニング可能です。
時間や場所を制限することなくどこでもできるため、自宅のみならず近所の公園や広場、出張先でもできます。
どこでもできるからといって、人の迷惑になるような場所で行うのは避けましょう。
もちろん、SNSでバズることを目的としたYoutuberやTikTokerとなって炎上しても責任は負えません。
「メイワク、ダメ、ゼッタイ」
HIITトレーニングのデメリット
一方、デメリットとしては、
1.きつい、とにかくきつい
トレーニングの内容がハードで身体にかかる負荷(負担)が大きいです。
最大心拍数の80~90%というのは普段運動することに慣れているアスリートでさえもきつく感じる強度です。
最大心拍数の80~90%といわれても、普段運動することに慣れていない方はイメージがしにくい数字だと思います。
具体的には、50mや100mなどの短距離を全力ダッシュした後の心拍数だと思っていただいてもかまいません。
運動直後は人と話すことができないと思います。それくらいの状態で10秒後にもう一回、さらにもう一回と合計8回繰り返す運動です。
タイパ(タイムパフォーマンス)が良いからといって安易にHIITトレーニングを始めると地獄を見ることになります。
2.ケガのリスクが高い
高強度で追い込むため、各種目の後半はフォームが乱れてしまいがちです。フォームが乱れたままトレーニングを行うとけがをする可能性が高まります。
またジャンプ系のトレーニング種目を採用する場合は足首や膝、腰などに負荷がかかりますので注意が必要です。
正しいフォームを習得し、各種目の動きを確認するようなウォーミングアップなどはかならず行うようにしましょう。
3.続かない
上記で挙げたようにきついトレーニングですから、継続することが非常に難しいトレーニングになります。
よっぽど強い目的がない限り続けることは難しいと思います。
アスリートができるのは、「試合に勝つ」「記録を向上する」という強い目的や目標があるからです。
「結婚式であのドレスを絶対着る」くらいの明確な目標があれば継続できるかもしれません。
普段あまり運動をしていない方であれば「HIITトレーニング」にこだわらず、軽いインターバルトレーニングとして始めてみることをお勧めいたします。
まずは「20秒運動-40秒休息」というところから始めて、慣れてきたら徐々に休息時間を30秒、20秒、10秒と短くしていくのが良いと思います。
HIITトレーニングの実際
HIITトレーニングのやり方
基本的には「20秒の運動(エクササイズ)-10秒の休息」を繰り返します。
内容は「4種目×2セット」(計4分間)から開始するのが良いでしょう。
アスリートであれば、3~5分間の休息後さらに複数セット行います。
初心者や体力に自信がない方であれば、「4種目×1セット」(計2分間)だけでもかまいません。
トレーニング例として、
- 腕立て伏せ 20秒
休息 10秒 - スクワット 20秒
休息 10秒 - クランチ(腹筋) 20秒
休息 10秒 - バーピージャンプ 20秒
休息 10秒
→「①の腕立て伏せ 20秒」に戻り「④バーピージャンプ 20秒」で終了
具体的なトレーニングプログラムは、いくらでも組み合わせが可能ですので誰でも知っているトレーニング種目で例を示しました。
上半身や下半身だけをトレーニングするという方法もありますし、腕だけを追い込むといった方法もあります。
(複数種目を連続で行うスーパーセット法やコンパウンドセット法、ジャイアントセット法といったHIITトレーニングとは別のトレーニング方法もあります)
あのオリンピック金メダリストもオリンピックに向けて出発する直前までHIITトレーニングで追い込んでいました。
上の例とはプログラムは全く異なりますが、20秒運動(10種目~)-10秒休息×数セットという基本コンセプトは変わりません。
HIITトレーニングの注意点
実施をする上での注意点といたしましては、
- 各種目のフォームや動作を正確にできる
- 運動する場所の確保
- 当日の体調
といったことが挙げられます。
各種目のフォームや動作を正確にできる
これは、トレーニングの後半に疲労してくるとフォームが乱れたり、
狭い可動域でトレーニング回数だけこなしてしまうことがあります。
できるだけ20秒間正確な動作でトレーニングすることを心がけましょう。
運動する場所の確保
ご自宅がマンションなど集合住宅などで行う場合は、振動や音など近隣に迷惑をかけないように配慮してください。
ジムなどで行う場合は、ジムでは他の利用者や周囲の安全を配慮したりジムの利用ルールなどに従ってください。
当日の体調
HIITトレーニングに限ったことではありませんが、睡眠不足や体調不良の状態でトレーニングすることは避けましょう。
また、持病などをお餅であれば主治医にご相談の上トレーニングを実施するようにしてください。
以上が主な注意点となります。
HIITトレーニングのトリビア
HIITトレーニングの礎ともいえるインターバルトレーニングは、1930年代のスウェーデン軍の長距離トレーニングであるファルトレク走や1952年のヘルシンキオリンピックで長距離種目三冠(5000m、10000m、マラソン)を獲得したエミール・ザトペック選手の練習方法が元といわれています。ちなみに、サーキットトレーニングは1950年代にイギリスのモーガンとアダムソンにより創始されたといわれています。
現在の日本における筋力トレーニング普及の第一人者である窪田登氏(早稲田大学、吉備国際大学名誉教授)は著書『筋力トレーニング法100年史』の中で、1940年代に「戦技訓練」として小学生時代に経験があるとのことが記されています。消防やレスキュー隊が日常で行っている訓練もインターバルトレーニングともとらえることができます。「クロスフィット」や「スパルタンレース」もインターバルトレーニング、サーキットトレーニングから派生したものと言えるでしょう。また、現在アーバンスポーツとして流行している「パルクール」も、もともとはインターバルトレーニングが源流となっています。これは私の個人的な推測ですが、インターバルトレーニングやサーキットトレーニングは人類誕生以来、体力強化のために本能的に行われていたのかもしれません。それこそ歴史は「繰り返す」ということでしょうか。
最近話題のhiit(HIIT)トレーニングって何?まとめ
近年話題のHIITトレーニングについて経緯からメリット、デメリットなどをお伝えいたしました。
トレーニングプログラムはそれぞれのトレーニング経験や体力、環境、設備、用具によって違ってきます。
具体的なトレーニングについて興味のある方や体験してみたい方はぜひ一度ご相談ください。
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Physical Context [ フィジカルコンテクスト ] はストレングス&コンディショニングの原理・原則に基づいた出張型トレーニングサービスです。トレーナーの中村波雄は柔道日本代表の指導経験もございます。
福利厚生・企業トレーナー(社員の健康増進)
経営者やビジネスパーソン、一般向けフィジカルサポート
日々いろんなことに挑...
アスリートのフィジカルトレーニング(チーム・個人)
このコラムを書いた人
Physical Context [ フィジカルコンテクスト ]代表中村波雄
経歴
- 社会人アメリカンフットボールチーム
- 東海大学トレーニングセンター(ラグビー部、男女柔道部、男女テニス部など)
- 森永製菓(株)ウイダートレーニングラボ
- 東海大菅生高校ラグビー部
- 山手学院野球部
- 日本道路公団柔道部
- 実業団ノルディックスキーチームEINS
- 桐蔭学園柔道部(桐蔭横浜大学、高校男女、中学)
- 全日本男子柔道チーム
- 淑徳大学柔道部
- 九州看護福祉大学柔道部 など
委嘱
- 全日本柔道連盟サポートスタッフ(男子ストレングス担当):2001年~2008年(アテネ、北京オリンピック)
- 日本オリンピック委員会強化スタッフ(柔道・情報戦略):2001年~2012年
資格
- NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)認定ストレングス&コンデショニング スペシャリスト(CSCS)
- NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)認定パーソナルトレーナー(CPT)
- JATI(日本トレーニング指導者協会)上級トレーニング指導者(JATI‐AATI)
- 国際救命救急協会C.P.R+AED
メッセージ
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