トレーニング器具(用具)について
トレーニング器具というと、昔からぶら下がり健康器やアポロエクササイザー、ブルワーカー、エキスパンダーなどがありました。
現在の器具であれば、バランスボールやフォームローラーなどを思い浮かべる方がおられると思います。
一口にトレーニング器具といってもさまざまです。
目的や用途によって大きく3つにわけることができます。
- 筋トレなどパフォーマンスを上げるもの
- ストレッチなどケアやリラクゼーションするもの
- サポーターなど身を守るもの
今回は比較的持ち運びが可能なトレーニンググッズについて述べます。
バーベルやダンベル、トレーニングマシン、トレッドミル(ランニングマシン)固定式自転車(フィットネスバイク)等は別の機会に譲ります。
また、一部の器具の名称は商標登録されているものがあります。そのため呼称になじみがないものやわかりづらいものがあるかと思います。
器具の呼称には注意を払っておりますが、どうしてもその名称でなければイメージできないものもあるため、もし商標侵害であればご指摘いただければ削除あるいは修正いたします。
①トレーニング器具 パフォーマンス向上
筋力トレーニングを目的としたもの
昔からある握力を鍛えるハンドグリップを始め、最近ではTRXなどのサスペンショントレーニングやウォーターバッグなど多岐にわたります。
ゴム製のループ状バンドを足や大腿部にかけて使用するものも最近流行しています。
一昔前は肩のインナーマッスル(ローテーターカフ)を鍛えるために板状のゴムバンドが流行していました。
ラバーによる負荷は終動負荷だから…とおっしゃる方もいますが、スポーツは筋生理学(筋活動)だけではなく運動法則(ニュートン力学)や対人競技の場合はリアクションなども考慮に入れなくてはなりません。いろいろな要素が絡み合った「複雑系」ということを考慮していただけたらと思います。
TRXなどのサスペンショントレーニングも比較的最近注目されているトレーニング器具ではないかと思います。アメリカで軍隊出身者が開発したのを以前ディスカバリーチャンネルで拝見いたしました。随所に工夫されていて世界的大ヒットしているのも納得できます。
筋力トレーニング用の器具と言えばプッシュアップバーやディッピングバー、ロープ(バトルロープ)等々個々の商品を数えだしたらキリがありません。
通販番組で目にするものも最近では多くありますが、海外のフィットネス展示会に行くとそれらのものが数年後に日本に入ってくるといった印象です。
「楽して痩せたい」という現代の人類共通の欲望がある限り、商品開発は続いていくものと思われます。
専門家としては目新しさや流行に左右されずに、しっかりと目利きとして伝えていく必要があると思います。
パワー、ジャンプ系トレーニング器具
メディシンボールしかなかった時代から、バッグ状のもの(パワーバッグ)が登場してから20年以上は経つでしょうか。今では水を中に入れたものを膨らます「ウォーターバッグ」も登場しています。考え自体は世界各国で昔からあり、バーベル一辺倒だったアメリカ式ストレングストレーニングが普及する中でいろいろと進化したものだと思います。私個人的な見解ですが、2000年1月末にNSCAジャパン10周年記念の米国研修に参加した際に、空軍士官学校(エアフォースアカデミー)のアレン・ヘドリック氏のトレーニングを見学する機会があり、そこではビール樽に砂と水を入れたトレーニング器具で学生がトレーニングしていました。
ジャンプ系のトレーニング器具で代表的なものはプライオボックスやハードルなどがあります。
前職でフィットネス器具の開発をしていた時に、以前から気になっていた柔らかい素材のプライオボックスと使い勝手の良いトレーニング用ハードルの両方を制作できたことは大変誇りに思っております(商品開発の知識や経験が足りず改良したい点はまだまだありましたがそのあたりはご容赦ください)。最近では海外性も多く比較的安価で手に入りやすいかと思います。
アジリティ系トレーニング器具
コーン、マーカー類
素材や形状は様々ですが、走る場所やエリアを目印にします
高さのあるものはその上をジャンプして超えるなどの使用方法もあります。
トレーニング用ラダー
ラダー(縄ばしご)状のものを地面や床において、足をマスの中や外に運ぶといった各種ドリルを行います。
だいぶメジャーなトレーニンググッズとなりました。
「ラダーをすれば足が速くなる」という噂からかかなり今や小学生にも浸透しています。
発育のため神経系が発達するのによいということでラダートレーニングを行う保育施設もあるようです。
スライドボード
この商品は何年かごとにブームがくる面白い商品です。スピードスケートのような横方向に足を蹴りだす動作(正確にはスピードスケートは前方方向に推進する)を模したトレーニング器具です。滑りやすい盤面上をナイロン製のシューズカバーを装着して使用します。効果はそれぞれの商品説明に記入されている通りです。内転筋を鍛える云々というよりも横方向に加速された体重をしっかり片足で受けて切り返すという効果がアスリートには有効です。リハビリで使用することもあります。
②トレーニング器具 ストレッチ用具など
自体重トレーニングに使用するマット類
ストレッチマット(ヨガマット)
自分の体重を利用したトレーニングやストレッチ、ヨガ等を行う際に床や地面敷くものになります。素材や大きさ、収納(持ち運び)方法による違いがあります。
ストレッチマット
六つ折りなどジャバラ(蛇腹)式のものであれば床面に接する場所が常に同じであるため、屋外使用でも比較的清潔に使用できます。スポーツだけではなくアウトドア用品ではテントの下に敷く「キャンプマット」「フロアマット」を使用することも多いです。空気が自然に入るインフレーター式マットもありますので使い勝手が良いものが多いです。持ち運びは多少不便な商品もあります。
ヨガマット
スタジオ等で自分のものを使用することが多いからか、持ち運びを重視するためか丸めて円筒状にする形状が比較的多い印象があります。もちろん教室によってはレンタルもあると思いますが、他人の汗が染みついたものを使用するのは衛生的に好ましくないので最終的には自分の気に入った色や素材のものを所有することになります。
セルフケア用トレーニング器具
日本に入ってきたのは2000年頃という記憶があります。
そのころはストレッチを補助する円柱状のポールを総称した用語でしたが、現在は商標登録されており表現が難しいです。
脊柱のストレッチに使用するほか筋肉を覆う筋膜を緩めるといわれるセルフマッサージ用に使用する用具になります。
主に脊柱のストレッチに使用するものは長さ100㎝程度のものを、セルフマッサージ用に使用するのは長さ30㎝程度で中が空洞になっているものが多いです。
商品によっては電気振動する機能がついているものもあります。
30㎝程度の円柱を半分にして断面が半円状のもの(ハーフカット)もあります。
こちらは前腕や足関節のストレッチやバランストレーニングに使用します。
ストレッチバンド
ゴム製で伸縮性のあるものや、ナイロンなど化学繊維製の伸縮しないものがあります。
商品によって形状は異なりますが、先端の輪などに踵やつま先を通して大腿部裏側(ハムストリングス)のストレッチを補助します。
日本の野球やメジャーリーグ等のウォーミングアップで見かけたことがある方もいると思います。
その他ラグビーやバスケットボール、バレーボールのウォーミングアップやクールダウンで見かけることもあります。
トレーニング後のケアをする器具
マッサージボール
硬式テニスボールやラクロスボールなどを使用して肩回りや腰部をセルフマッサージします。
足裏(足底)など部位によってはゴルフボールを使用します。市販品も数多くありご自身の感覚に応じて使用します。
マッサージガン
有名女優さんがCMしていることで最近よく見かけるようになりました。
首や肩、ふくらはぎなど疲労感のある所に当てる電動マッサージ用器具です。
③トレーニング器具(用具) 身を守るもの
トレーニング用具 サポーターなど
サポーター
主に関節部分を保護する用途で使用します。競技スポーツによってはルールで規定されている場合がありますので注意が必要です。
(サポーターに金属が入っているため練習ではよいが、試合では使用不可など)
バンテージ(伸縮性、非伸縮性)
ボクシングなどではグローブの下にバンテージを巻きますが、長さや幅、巻き方などにもルールがあります。
パワーリフティングもフルギアでは膝にバンテージを巻くことでノーギアよりも挙上重量が増えます。
リストラップ
ベンチプレスなどで手首を立てるのが厳しい場合にはリストラップを使用することがあります。
(ロウイング系種目で使用する「リストストラップ」とは別です)
グローブ
バーベルやダンベルを使用したりけんすい(チンニング)などのトレーニングを行っていると手にマメや水疱(=みすぶくれ)ができることがあります。
野球やラケットスポーツ、ゴルフなど手に道具を持つ競技はプレーに影響が出ますのでトレーニング中はグローブを使用することをお勧めします。
トレーニング用具 リストストラップ
ロウイング種目やデッドリフトなど「引く」系の種目に使用します。
トレーニングの上級者になってくると扱う重量が増えてきて、背中のトレーニングを行っているのに「握力が耐えられなくて背中を鍛えられない」ということが起こってきます。
その場合にこのストラップを使用します。握力を必要とする競技の場合は、私がアスリートに指導する場合には「握力も含めてトレーニング」と思っていますのであまり積極的に使用させません。(もちろん上記のように、背中のトレーニングにならない場合は例外です)
例えば柔道では、相手の道着を離してしまっては勝てませんので日ごろから「ストラップ使用禁止」にすることが多いです。
200㎏のデッドリフトで握力が耐えられないのであれば180㎏で安全に丁寧に行う方が柔道にとって有用です。
これはウエイトリフティングやパワーリフティングのように挙上重量を競う競技ではないからです。
トレーニング用具 リフティングベルト
よく「腰を守るため」「腰をけがしないため」にむやみやたらにリフティングベルトを使用する方が多いです。
リフティングベルトの目的は「腹圧を高めるため」です。高重量(5RM以上)を扱うのであれば使用します。
服(ボトムス)などで使用する「ファッションベルト」とは使用法が全く異なります。
実際に使用するときは、トレーニング試技に入る直線に胴体とベルトの間に指が入らないところまで思いっきり締め上げて使用します。
(昔のアニメ「少年シンドバッド」のマジックベルトのイメージです)←わからない方は検索してみてください。便利な世の中になりました。
レップ終了後はすぐに外し(というか外さないと苦しい)、セット間は外したまま休息あるいはプレートを付け外しをします。
5RMの重量を使用しない場合は基本的にリフティングベルトなしでトレーニングを行います。
ただし本人に椎間板ヘルニア等既往歴があるなど腰部に不安を抱えている場合は使用することもあります。
トレーニングでリフティングベルトを多用していると「体幹部の筋力低下」がみられるとの報告もあるので、10RM程度の「普通」のスクワットやデッドリフトでは使用しない方がよいと思っています。
トレーニング器具(用具)についてまとめ
コロナ禍の影響もあり、自宅でトレーニングをしようとトレーニンググッズを購入した方も多いのではないでしょうか。
せっかく購入したグッズをぜひ有効活用してください。
コラムの途中にさらっと書いてありますが、前職でフィットネス商品開発に携わっていました。
企画から試作、耐久試験、製品化の場合のロット数、ネーミング、商標や特許検索、商品管理やマニュアル制作、クレーム対応まで一気通貫で関わっていました。
商品ができるまでの苦労は一通り理解しているつもりです、「この商品が売れるかどうか」はわかりませんが、フィットネス商品を開発したいという方がいらっしゃいましたらご相談も承ります。
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このコラムを書いた人
Physical Context [ フィジカルコンテクスト ]代表中村波雄
経歴
- 社会人アメリカンフットボールチーム
- 東海大学トレーニングセンター(ラグビー部、男女柔道部、男女テニス部など)
- 森永製菓(株)ウイダートレーニングラボ
- 東海大菅生高校ラグビー部
- 山手学院野球部
- 日本道路公団柔道部
- 実業団ノルディックスキーチームEINS
- 桐蔭学園柔道部(桐蔭横浜大学、高校男女、中学)
- 全日本男子柔道チーム
- 淑徳大学柔道部
- 九州看護福祉大学柔道部 など
委嘱
- 全日本柔道連盟サポートスタッフ(男子ストレングス担当):2001年~2008年(アテネ、北京オリンピック)
- 日本オリンピック委員会強化スタッフ(柔道・情報戦略):2001年~2012年
資格
- NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)認定ストレングス&コンデショニング スペシャリスト(CSCS)
- NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)認定パーソナルトレーナー(CPT)
- JATI(日本トレーニング指導者協会)上級トレーニング指導者(JATI‐AATI)
- 国際救命救急協会C.P.R+AED
メッセージ
Physical Context [ フィジカルコンテクスト ]は、アスリート、一般の方々の身体力向上、コンディショニングのお手伝いをいたします。
不易流行という言葉に表されるように、あまり奇をてらった方法や流行に左右されず、原理・原則に基づいたトレーニングプログラムをご提供いたします。
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