アスリートのためのフィジカルトレーニング

 今やどんな競技であってもフィジカルトレーニングは必要だということはかなり浸透しています。
アスリートがトレーニングの様子をSNSで発信することも普通となっています。

もしあなたが現在フィジカルトレーニングをしている方は、なぜしているのですか?
そろそろ始めようと思った方は、なぜ始めようと思ったのですか?
「みんな(チームやライバル)がやっているから」「フィジカルが弱いから」となんとなくフィジカルトレーニングをしていませんか?
情報があふれる現代だからこそ、フィジカルトレーニングの重要性を改めて考えてみましょう。

フィジカルトレーニングとは

フィジカルの定義

 「フィジカル(Physical)」とは辞書的な意味であれば、「身体的、肉体的」という意味で、メンタル(精神的)との対義語になります。(他にもフィジカルには「物理的、物質的、自然的」などの意味がありますがここではその意味ではありませんので割愛します)
スポーツにおけるフィジカルとは、筋量、筋力、パワー、心肺機能、アジリティ、柔軟性など「体力要素」を指します。
競技によって名称が異なりますが、「体力要素」を表す用語として
サッカーでは「フィジカル」
アメフト(アメリカンフットボール)やラグビーでは「ストレングス」
その他の競技では、上記2つと「体力」「筋力」「フィットネス」が使われることが多いように感じます。
「体力」「フィットネス」は有酸素性持久力(心肺機能)の意味で使われることもあります。
競技によってその言葉が何を指しているのかを理解しておくことも大事なことだと思います。


フィジカルトレーニングとは

 さて、トレーナー(正確にはストレングス&コンディショニング)の国際的な教育機関であるNSCA(National Strength & Conditionimg Association)は
 「ストレングス(Strength)とは筋力、パワー、筋持久力のみならずスピード、バランス、コーディネーションなどの筋機能が関わるすべての体力要素に不可欠な能力」
「コンディショニング(Conditioning)とは、スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えること、一般の人々にとっては、快適な日常生活を送るために、筋力や柔軟性、全身持久力をはじめとする種々の体力要素を総合的に調整すること」

と定義しています。詳細はhttps://www.nsca-japan.or.jp/01_intro/sandc.htmlを参照してください。

フィジカルトレーニングとはまさにストレングストレーニングのことを指しているのですが、ストレングストレーニングやストレングスコーチという言葉は、なじみがないのが現実です。
ここではフィジカルトレーニングはストレングストレーニングと置き換えて述べていきます。コンディショニングが柔軟性や全身持久力といった体力要素を調整することも含まれているのでフィジカルトレーニング=ストレングス&コンディショニングトレーニングという認識で進めていきます。

フィジカルトレーニングとストレングス

  ここでは筋力を指すストレングスについてもう少し詳しく述べたいと思います。ストレングスという用語自体あまりなじみのない言葉だと先ほど申し上げました。「ストレングス(Strength)」とは 英語「Strong」の名詞形で「(肉体的、物理的、精神的な)力、強さ」から「筋力」を意味します。「筋力」もmuscle(musular) strength や physical strengthといいます。 筋力を高めるトレーニングを「ストレングストレーニング」といいますが、その手段である「ウエイトトレーニング」という用語が浸透しています。 ウエイトトレーニングを普及していただいた諸先輩方には大変感謝してますが、なぜか「ウエイトトレーニング」という言葉は「重量物を持ったトレーニング」という誤解もつきまとっているようです。以前「筋力を高める手段はウエイトだけではないから「レジスタンストレーニング」という言葉に統一しよう」という動きもありましたが、こちらもあまり浸透はしていません。手段や名称がどうであれ筋力を高めるトレーニングということで、私は「筋力トレーニング」「ウエイトトレーニング」「ストレングストレーニング」「レジスタンストレーニング」という言葉を相手や状況に合わせて使い分けています。 ただ、「フィジカルトレーニング」という言葉だとざっくりとしているために「フィジカルにおける筋力を向上」「フィジカルにおけるパワーを向上」といった使い方をすることもあります。

フィジカルトレーニングの目的

なぜフィジカルトレーニングを行うのか

そもそもなぜフィジカルトレーニングを行うのでしょうか。
フィジカルトレーニングの目的とは何でしょう。
スピードを上げる、当たり負けしない、筋肉をつける、筋力を上げる、パワーをつける、スタミナをつける…などいろいろ目的があると思います。
そういった個々の体力要素を向上させることが目的というのもありますが、フィジカルトレーニングには

  • パフォーマンスの向上
  • けがの予防

という大きく2つの目的があります。


フィジカルトレーニングの2つの目的

1.パフォーマンスの向上

体力要素を向上させることがフィジカルトレーニングの重要な目的になります。
こちらは非常にイメージしやすいかと思います。
特に陸上競技などの記録系競技は練習とフィジカルトレーニングが近い関係にあると思います。
一方で球技や格闘技など対戦相手が必要な種目や体操競技やフィギュアスケートなど審査系の種目は技術練習の割合が多い傾向があるといえます。

2.けがの予防

これは見落とされがちになりますが、こちらもパフォーマンス向上と同じくらい重要になります。
スポーツは利き手や利き足、ルールによって動作が制限されることもあります。
アスリートはそれぞれの競技や種目の練習で同じ動作を繰り返します。
同じ動作を繰り返しているとけがをしてしまうことがありますので、
けがを防ぐためには全身をバランスよく鍛える必要があります。

フィジカルトレーニングの攻撃面と守備面

各種競技と同じように、攻撃面である「パフォーマンスの向上」と守備面である「けがの予防」のどちらか片方だけでは成り立ちません。表裏一体、つまりニコイチ(二つで一つ)なのです。
パフォーマンス向上のためには技術練習が欠かせません。練習でけがをしないためにも、けがをしない身体づくりや動きづくりをする必要があります。
より高度な技術や戦術を身につけるためにはより強度の高い練習が必要ですが、それに耐えられるだけの体力が必要になります。
イビチャ・オシム(元サッカー日本代表監督)さんはジェフ市原の監督時代に、けが人が続出したチーム事情を聞かれて「ライオンに襲われた野ウサギが肉離れをしますか? 準備が足りないからだ。」と答えました。
試合や練習試合では、相手と接触したりしてどうしても避けられないけがというのもあります。
一方で避けられるけががあるのも事実です。パフォーマンスを向上させるための準備をフィジカルトレーニングで行いましょう。

フィジカル要素のトレーニング

アジリティトレーニング

アジリティとは何でしょう。
日本語では「敏捷性」「俊敏性」「機敏性」といった意味になります。
以前はスポーツやトレーニングのみの用語だったのですが、そのうち犬の障害物競走(ドッグ・アジリティ)も指すようになり、最近ではビジネス界でも組織運営の対応の速やさなどという意味で使用されているようです。

ここでは、もちろんスポーツにおけるフィジカルトレーニングに限定して述べます。
SAQという用語はご存じでしょうか。日本SAQ協会 https://nisaq.com/ ではそれぞれ

  • Speed:重心移動の速さ
  • Agility:運動時に身体をコントロールする能力
  • Quickness:刺激に反応して早く動き出す能力

と定義されています。
漠然と「あの選手はスピードがある」「スピードが足りない」というのをきちんと分類されて非常に便利でセミナー等でよく使わせていただきます。
ラダーやミニハードルなどを用いてドリルを行うことで向上します。
私は「アジリティ」をSAQ全体として捉えて、スポーツ現場では「刺激の反応や方向転換も含めてすばやく動くこと」の意味合いで「アジリティ系トレーニング」として実施します。


パワートレーニング

パワーとは何か理解してますか?
先ほどのSAQと同様に「あの選手はパワーがある」「パワー負けした」「もっとパワーをつけたい」と耳にします。
この場合は単に「筋力」のことを指すことが多いようです。
スポーツにおいて、パワーとは「筋力×スピード」で表されます。
物理学(力学)ではパワーとは「仕事率」を指し、
「パワー(仕事率)=力×距離÷時間」となり、「距離÷時間」は速度なので
「パワー=力×速度」ということになります。
さて、トレーニングとしてはパワートレーニングとしてクイックリフトと呼ばれる「クリーン」「スナッチ」「ジャーク」を採用します。
それぞれ重量上げ(ウエイトリフティング)の種目ですがスポーツ用に若干アレンジします。「ハイクリーン」や「ハングスナッチ」といった用語を聞いたことがある方もいるかもしれません。ダンベルを使用して両手あるいは片手ずつ行うこともあります。
他には伸張反射を利用したプライオメトリクスなどもパワートレーニングとして採用します。

ウエイトトレーニング

ウエイトトレーニングの目的はバーベルを使用することが多いので誤解されることが多いです。
ここで「ウエイトリフティング」「パワーリフティング」「ボディビル」を明確にしておく必要があります。

ウエイトリフティング(重量挙げ)

パワートレーニングの項でも述べましたが、
オリンピックの正式競技として、「クリーン&ジャーク」「スナッチ」の2種目の挙上重量の合計を競います。

パワーリフティング

競技の名称に「パワー」とありますが挙上速度はあまり関係しません。「ベンチプレス」「スクワット」「デッドリフト」の3種目合計の挙上重量を競います。ちなみに「ベンチプレス」はパラリンピックの正式種目となっています。

ボディビルディング

バーベルの挙上重量を競う競技ではなく、筋肉の大きさや形などを競う審査系種目です。
既定のポーズを審査員が総合的に審査します。
音楽に合わせて表現するフリーポーズというのもあります。

ウエイトトレーニングはあくまでも手段です。
ウエイトトレーニングというとボディビルやフィジークのように身体を大きく(筋肥大)することやパワーリフティングのように挙上重量を目的ととらえられがちですが、決して筋肥大や挙上重量だけが目的ではありません。
あくまでも筋量増大や筋力向上のための手段ととらえてください。

アスリートのためのフィジカルトレーニングまとめ

定義ばかりで、堅苦しい内容になってしまいました。
ただこの辺があいまいだと「何のためにフィジカルトレーニングをするのか」がわからないまま、
「フィジカルレーニングは嫌いです」「フィジカルトレーニングは意味がない」とまで言われてしまいます。
この辺の誤解を解いていくことも重要かと思いこのような記事になりました。

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このコラムを書いた人

Physical Context [ フィジカルコンテクスト ]代表中村波雄

経歴

  • 社会人アメリカンフットボールチーム
  • 東海大学トレーニングセンター(ラグビー部、男女柔道部、男女テニス部など)
  • 森永製菓(株)ウイダートレーニングラボ
  • 東海大菅生高校ラグビー部
  • 山手学院野球部
  • 日本道路公団柔道部
  • 実業団ノルディックスキーチームEINS
  • 桐蔭学園柔道部(桐蔭横浜大学、高校男女、中学)
  • 全日本男子柔道チーム
  • 淑徳大学柔道部
  • 九州看護福祉大学柔道部 など

委嘱

  • 全日本柔道連盟サポートスタッフ(男子ストレングス担当):2001年~2008年(アテネ、北京オリンピック)
  • 日本オリンピック委員会強化スタッフ(柔道・情報戦略):2001年~2012年

資格

  • NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)認定ストレングス&コンデショニング スペシャリスト(CSCS)
  • NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)認定パーソナルトレーナー(CPT)
  • JATI(日本トレーニング指導者協会)上級トレーニング指導者(JATI‐AATI)
  • 国際救命救急協会C.P.R+AED

メッセージ

Physical Context [ フィジカルコンテクスト ]は、アスリート、一般の方々の身体力向上、コンディショニングのお手伝いをいたします。
不易流行という言葉に表されるように、あまり奇をてらった方法や流行に左右されず、原理・原則に基づいたトレーニングプログラムをご提供いたします。

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